「働くって何だ 30のアドバイス」(森清)

中学生、高校生のキャリア学習のための参考書

「働くって何だ 30のアドバイス」
(森清)岩波ジュニア新書

「働くって何だ 30のアドバイス」

私は、
「働くとは何か」と聞かれたとき、
原点に戻って
考えた方がいいと思う。
「働くこと」の原点は、
朝の必要な時刻に起きることから
始まるといえる。だから、
「働くとは朝に起きること」と
まず定義し、そこから
次の具体的な働き方を…。

「働く」とは何か。
これは実に大きなテーマであり、
解答を一言で示すのは困難でしょう。
実際に働いてみないことには
わかりません。いや、
実際に働いている大人にとっても
難しい問いです。
だからこそ、未来の職業人である
中学生高校生の子どもたちには、
ぜひいろいろな本を読んで、
「働く」とは何か、
考えて欲しいと思うのです。
その点、
岩波ジュニア新書の一冊である本書は、
キャリア学習のための
参考書といえる内容です。

〔本書の章立て一覧〕
はじめに
第1章 働くって、生きるって?
第2章 働きの体験
第3章 どこで、どんな職場で働くか
第4章 働き方の基本を考えよう
あとがき

本書の特徴①
若者へのアドバイスが豊富

「夢と現実は違う」という
割り切りに対して、
「夢は現実の中で実現させるもの」と
助言します。
学歴について触れ、
「どのような時代になっても
 生き延びていかれるように、
 学歴を大事にしつつも、
 学歴に頼らず
 働き暮らしていく覚悟を持ち、
 その姿勢を
 保っていたいものである」

諭します。
「仕事と家庭は別」という考え方は
過去のものと喝破し、
「情報化社会となって
 会社と家庭が結ばれるようになり、
 仕事と家庭を均衡させなければ
 ならない時代になった」

示唆します。

本書の特徴②
学校での学びを大切に捉えている

とかく「学校で学んだことは
実社会で役にはたたない」と言いきる
啓蒙書の多いことに
辟易とさせられることがあります。
そうした本のほとんどは、いたって
つまらない内容だったりします。
本書は学校を身近な社会と捉え、
そこから学ぶことを促しています。
「教師それぞれの思いと、
 学校という組織が
 教員に要求する役割とが
 一致しないこともある。
 これは、学校に限らず
 会社などでも起きる問題だ。
 組織の要求と個人の志との隔たり。
 そういう難しい問題を抱えながら
 目的を達成するため
 真剣に働くのが職業人である。」

いいところを突いています。

本書の特徴③
実践的・直接的な部分にも触れている

職業を論ずる書には、
理念だけが延々と述べられているものも
少なくありません。
本書は学生の立場に立ち、
必要な知識を与えることも
忘れていません。
国の教育ローンその他の育英資金を
利用して進学する道があること、
ボランティアやインターンシップは
職業を学ぶ良い機会となること、
ゆとりを大切にした「スローワーク」を
考えていく必要があること等々。

現代は、働く意義を見つけるのが
難しい時代といえます。
豊かな時代でありながらも、
至るところに見えない貧困が
隠れている時代です。
子どもとともに、大人である私たちも
「働く」とは何か、
考え続ける必要があると思います。

※本書には一点、気を付けて
 読むべきところがあります。
 ともすればブラックな職場で
 あることの多い「人材派遣会社」を、
 無条件で好意的に
 捉えていることです。
 働くスキルを上手に学べる
 派遣会社が
 世間にどれだけ存在しているのか、
 他の情報源で
 調べてみたいと思います。

(2020.3.27)

Alexas_FotosによるPixabayからの画像

【関連記事:働くこととは】


【岩波ジュニア新書はいかが】

created by Rinker
¥946 (2024/05/18 18:49:10時点 Amazon調べ-詳細)

【今日のさらにお薦め3作品】


【こんな本はいかがですか】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA